TMD(噛みしめ症候群)のケーススタディ

●「TMD(噛みしめ症候群)」のケーススタディ1(50代女性)
「冷たい水を口に含むと歯がしみて痛む」といくつかの歯科医院で診察を受けましたが、一向に原因が分からず、ある歯科医院では「歯の神経を取ってセラミックを被せたほうがいいでしょう。治療費は400万円ほどかかります」といわれました。
ところが、「TMD(噛みしめ症候群)」の知識がある歯科医院で診察を受けたところ、この症状が噛みしめの結果であることが分かり、セルフケアの指導を受け、2・3回の通院で症状が緩和しました。患者さんは「あの400万円という見積りは、いったい何だったのか」と首を傾げていましたが、以後定期的にチェックをし、症状は6年ほど収まっています。

●「TMD(噛みしめ症候群)」のケーススタディ2(30代女性)
胃腸の調子がずっと思わしくなく、食欲不振や疲れやすく元気が出ない、首の付け根に肩こりがある、常に熟睡感がなく口の中も乾いているなどの症状があり、病院で医科的な検査を受けましたが、どこにも異常はなく、この全身の不 調の原因が特定できませんでした。しかし、歯科医院で診察を受けると、噛み合わせの不具合があることが分かり、治療を行ったところ、10回の来院で症状が出なくなりました。噛み合わせを整えるため、噛み合っていない歯の表面にプラスチックを足して調整しましたが、歯は一切削っていません。現在は1か月に1回チェックをしており、何の問題もなく普通の生活をしています。

●「TMD(噛みしめ症候群)」のケーススタディ3(50代女性)
婦人科からの紹介で、顔が痛いと強く訴える患者さんが歯科医院を来院されました。
顔の痛み以外にも側頭部の緊張型頭痛、首こり、肩こり、咀嚼する筋肉の一つである咬筋の痛み、不眠、冷え、右眼瞼下垂などの症状が出ており、診察したところ、典型的な「TMD(噛みしめ症候群)」であることが分かりました。
そこで、マウスピースを併用しながら治療したところ、4回目で右眼瞼下垂が上がり始め、顔の痛もなくなり、それまで医師から処方されていたさまざまな薬は一切要らなくなりました。さらに治療を続けると6回目で全ての症状がなくなり、今では快適な毎日を過ごしています。

●「TMD(噛みしめ症候群)」のケーススタディ4(50代男性)
顎関節の周りの痛みや、緊張型の頭痛があり、他にも虫歯や歯周病でないのに歯が痛み、さらに歯科治療をする度に症状はどんどん悪くなっていったそうです。
診察をしたところ、奥歯しか噛んでおらず、前歯が噛み合わないオープンバイトの状態でした。しかも歯科医院で治療のたびに歯を削っていたため、頭蓋、頸部、顎、口腔系のバランスが崩れていました。
そこで、削られてしまった歯の表面にプラスチックを足し、バランスを整えることで症状を改善しました。

●「TMD(噛みしめ症候群)」のケーススタディ5(40代女性)
左下の歯ぐきが頻繁に腫れると訴えて来院されました。こうした症状の場合、一般的には歯周病が疑われますが、プラークも歯石もついておらず、診察したところ、歯周病が原因ではありませんでした。しかし、頭の位置が左に傾き、顎が上がっている状態で、さらに噛みしめがあり、つねに過剰の荷重が左下の奥の歯にかかっていました。
そこで、これを解消するためにマウスピースを使用して、頭の位置を修正しました。
その結果、2回目の来院で痛みと歯ぐきの腫れ完全になくなり、さらにその後は歯槽骨の回復を目指しました。

以上のケーススタディのように、「TMD(噛みしめ症候群)」は、歯や歯周組織、顎関節だけではなく、患者さんの全身症状と密接な関係があります。そして、それはストレスとも深く関係しています。

患者さんのお話を聞いていると、歯が痛くなる、歯肉が腫れる、咀嚼筋が痛むなどの症状は、患者さん自身の生活の中で起こったさまざまな事柄とリンクしていることが少なくありません。
しかも、医療関係者はそれに気づかず、自律神経失調症と診断して治療と投薬を行うケースも見受けられます。

現在はストレス社会だと言われ、いろいろな人がストレスという言葉を使っています。

ストレス研究の権威であるHans Selyeは、ストレスの原因はメンタルだけではなく、人間の体の構造、化学物質、気象などもストレスの原因であるといっています。
また、Hans Selyeの弟子で歯科医師のA.C.Fonderは、『Dental Disstress Syndrom(噛みしめ症候群)』という論文の中で、「口腔内のさまざまな不具合が全身のいろいろな部位に不具合さを出す」と記し、上部頸椎の配列の悪さが問題を引き起こすと述べています。

しかし、現代医療においては、頭蓋、頸部、顎、口腔系を基本にした医療が見落とされています。