高齢者にも悪影響を与える「TMD(噛みしめ症候群)」
「TMD(噛みしめ症候群)」は、高齢者にも強く影響をもたらします。
高齢になると、頭が前に出ることにより前かがみになり膝が上がりにくくなり、これらの状態をロコモティブシンドロームといいますが、これは、体のメカニズムが正常に機能しなくなった結果です。
ここでは、高齢者の死因で多い肺炎を例に「TMD(噛みしめ症候群)」の影響を紹介します。
今、誤嚥性肺炎の予防が喫緊の課題になっています。
予防の為、口腔内を清潔に保つ、舌の筋肉や咽頭部を鍛える等々情報が溢れていますが、嚥下のメカニズムは、まだ解明されていません。
そのメカニズムは食べ物を口に入れる前からすでに始まっています。食べ物を見てから、咀嚼して、嚥下する一連の動きを摂食・嚥下と呼びます。
この摂食・嚥下は、
(1)飲食物の形や量・質などを認識する先行期
(2)飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする準備期
(3)飲食物を口腔から咽頭に送り込む口腔期
(4)飲食物を咽頭から食道に送り込む咽頭期
(5)飲食物を食道から胃に送り込む食道期
の大きく5つの時期に分けて考えられています。
この一連の動きの中で、舌や下顎、顎関節など多くの器官や筋肉が複雑に嚥下の動きが行われています。
高齢になり、頭が前に出ると、頸椎が前方に傾斜して肩が内側に入ってきます。
すると、首が下方にずれる分、顎が下がります。顎が下がると嚥下もうまくいきません。
高齢者が嚥下する時に、頭の後ろに軽く指を触れ顎が上がらない様にすれば誤嚥しません。
肩が前に入り頭位が前に出て顎が上がる状況になるからです。
嚥下がうまくいかないのも、「TMD(噛みしめ症候群)」だと考えるのが妥当です。
決して筋肉の低下だけではありません。筋肉は鍛えると逆に筋力は落ちるのが実験の結果で明らかになっています。
高齢者になって慌てるよりは今から「TMD(噛みしめ症候群)」に対処することが先決です。